忍者ブログ
カテゴリーで公演名を確認して下さいませ。 とおし番号(1、2…)がある場合は、順番に読むと良いことがあるかも…、 もとい、順番になっています。 もっと読みたいものは、「つづきはこちら」からどうぞ。
[76] [75] [74] [73] [72] [71] [70] [69] [68] [67] [66]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

一応、「ヒロイックシンドロームを考える」シリーズとしては、完結編になると思います。
(まだ、この後もちょこちょこつぶやいていますが。)

(2007.2.7)


結局わたしは、結論を求めていたんですね。

「ヒーローが殺人の罪で訴えられる」

というお芝居。
ヒーローだからって、怪人を殺したら、それは「殺人」なんじゃないのか?
「ヒーロー」って何?「怪人」って何?ヒーローにとって、本当の敵って?

そんな前宣伝のもと、行われた「ヒロイックシンドローム」。
この公演が終わってからというもの、毎日のように「ヒロイック」のことばっかり考えて、「ヒロイック」なことばっかり話してきました。
そりゃもう、ここ数日のわたしの「ヒロイック」っぷりったら、凄いもんがありますね(笑)。どっぷり浸かっちゃってるじゃないですか。
今日もまた、くどいぐらい、語り続けています。

はい、好きなんです。「ヒロイックシンドローム」っていうお芝居が。

+ + + + + + + + + +
「ヒーローの苦悩」。
わたしはこのお芝居の前宣伝を見たときに、密かに、ひっそりと、無意識のうちに、期待していたのかもしれません。
近頃、「ヒーロー」や「怪人」の定義、つまりは「善と悪」の定義が分かりづらくなって、昔なら、ヒーローは怪人をボッコボコにする、それだけでハイ、「めでたしめでたし」、になった話が、今では「それって、ボコられた怪人がかわいそうじゃない?」という声が出るようになりました。

だから、「ヒーローの苦悩」をえがくことって、めちゃめちゃ難しい、と思うんです。
だって、「正解」なんて、無い。
「結論」なんて、このテーマには存在していないんだから。
その難しいテーマに、あえて挑戦するんだな、と思って。
だから、一体どんなお芝居になるのか。
もしかしたらこのお芝居は、今まで誰も思いつかなかった、目からウロコがポロポロこぼれるほどの「結論」を。
そんなもの凄いものを、わたしに提示してくれるんじゃないのか?
そんな思いもありました。

いや、多分…、ほんとにわたしは期待していたな…。
このご時世に、「ヒーローの苦悩」をテーマにしたお芝居を上演するというのならば。
それなら、何かしら「結論」という名の、目からウロコの「分かりやすい正解」が、発表されるんじゃないのか?
そう思ってた。


一応、このお話、この「ヒロイックシンドローム」には、ちゃんと「結論」があります。
このお話の主人公であるレッドが出した、「自分なりの答え」は、ちゃんとあります。
それが、自分の実体験を元にした、子ども向けのヒーローショーをやることによって、「起こった出来事を【消し去る】のではなく、【伝えていく】こと」。
これが、「主人公」の答えです。

戦う相手である「怪人」が居なくなった。戦うべき「敵」を見失った。自分の存在意義が無くなったとき、ヒーローが出した「結論」は、ヒーローとして「戦うこと」ではなく、ひとりの人間として、出来事を「伝えること」だった。

そしてこのお話の最後。
自らが殺めてしまった、怪人「海老男」の息子である少年から、「このヒーローショーがすきだ」、という内容の手紙を貰ったレッドの反応。
あれこそが、「ヒロイックシンドローム」の「結論」だと、思います。

あのシーンは、舞台上でレッドが、たった1人で手紙の文字を追うんです。
まだ、この段階では、客側には手紙に何が書いてあるのかは、分からない状態です。レッドはひとりで、手紙を黙読しているから。
…ただ、なんとなく、その「少年」の正体は、多分お客さんには薄々分かっていたと思いますが。
そして、レッドは手紙を読みながら…ここはマーさんが本当に、ひとりでお芝居をされているだけです。
…何も、セリフはありません。レッドの心情を表しているのは、舞台上のマーさんの一挙一動。それだけです。レッドの心情は、マーさんの演技から、全て読み取らなくてはいけない。
あのシーンは、息を呑んで見守りました。
そうしてレッドが手紙を全て読み終わり、仲間のもとへと走って去っていく…
その後、舞台上のスクリーンに、手紙の文面が映し出されて、レッドが読んでいた手紙の内容が分かるんです。

ちなみに「オチ」は、手紙に添えられた写真です。
海老男と、その妻らしき女性と、息子の写真が最後に映ります。
その「海老男」の姿は、思いっきり、まるごと「伊勢海老」一匹がゴーン!と映っている、という…。
これでこの話は、終わりです(笑)。

わたしの拙い語彙力で、レッドの心情が、「ヒロイックシンドローム」の結論が言えるのかどうか心配ですが、
あの手紙を読んだときのレッドは、確かに手応えを感じたのでしょう。
一度は、自分の存在意義を見失ったヒーロー。
倒すべき「敵」を見つけ、嬉々として…、本当に、「倒すべき相手」、「明確な敵が居る」、ということに喜び勇んで大畑総理を追いかけたレッド。
…けれど、そこに「自分の敵」は、いなかった。
それが分かったときの、落胆…。
呆けたように、空ろな言葉を宙に投げかけるレッド…。

一度は、「自分が存在している意義」を失くしたヒーロー。
そんなレッドが考えた、「子ども向けのヒーローショー」。
自分なりに、苦悩し、考え、考えて、考えて、考え抜いて…そうして始めることにした、「事実を基にしたヒーローショー」。
レッドが、【起こった出来事を伝える】という、自分の、ヒーローの「存在意義」を、やっとの思いで考え出して。

「ぼくにはおとうさんがいないけど、ナゾレッドをみていると、げんきになれるから、ぼくはナゾレッドがすきです」

この手紙は…、「結果」だったんだろうな。
いくら「俺たちが出来ることは、伝えること」、と腹をくくって「ヒーローショー」を計画したレッドだって。
心の底では、めちゃめちゃ不安だったんだろうな。
自分がやっていることは、本当に正しいのだろうか?と。
こんな「ヒーローショー」をやっていても、何も残せないまま…時は流れ、子どもは大人になり、自分も年を取り、何の爪あとすらも残せないまま、人生を終えてしまうのではないのだろうか、と。
結果が残らないヒーローショーに付き合ってくれる仲間さえも、いずれは飽きて、「伝える」ことに興味をなくし、自分の周りから離れていくのではないかと。
むしろ、「ヒーローショー」という自分の選択そのものが、結局何も残さないのではないのだろうか?とか。
もっと他に方法があったかもしれない。
「ヒーローショー」以外にも、自分がやるべき、存在意義を見出せるようなことは、他にもあったのかもしれない。

けれど、最終的に彼が選んだのは、「ヒーローショー」だった。
そして彼は、ヒーローショーをやるようになってから、初めてファンレターを貰った。
「ナゾレッドがすき」
という、その手紙は。
確実に、「レッドがここに居ること」を、肯定してくれた。
レッドがこの場所で、ヒーローショーをしている、という、その行動自体を。
全てを「肯定」してくれた手紙だったんじゃないだろうか。

自分がやっていることは、決して「間違い」ではなかった。

そのことを実感し、歓喜に打ち震え、ぶるぶる震えながらうなずき、拳を握り…
あれは…、あのときのレッドの反応は…、ガッツポーズ、なんだろうな。
自分がやっていることが、小さな、とても小さなことではあるけれど、確かに「何かを残せた」、ということ。

「ナゾレッドをみると、元気になれる」。
これは、レッドが必要とされている、という何よりの証拠なんだろうな。
一度は、自分は誰からも必要とされていない、と自暴自棄になったレッド。
よかれと思ってやった怪人退治は殺人罪、刑務所に居た5年間は平和そのもの、自分が居なくてもブルーとイエローはのほほんと暮らしていた。
誰からも必要とされて居ない、ヒーロー。
でも、そんなレッドにも、「あなたが必要だ」、と言ってくれる人が出来た。

どんだけ嬉しかっただろうか、レッドは。

この手紙を貰ったとき、レッドは本当に、どれだけの喜びを感じ取ったことだろうか。
そして、
わたしはこの文章を打っていて、ようやく分かった。
この文章を阿呆みたいに必死こいて考えながら打っていて、うっかり感情移入し過ぎて感情が昂ぶるあまり、ちょっとうるっと涙が出かけるまで考えて、ようやく分かった。

井上マーさんが、公演前、ご自身のブログで言っていたこと。

「ヒーローもの」ですが
描いているものは「人間」です

2008-01-29 「ヒロイック・シンドローム」


ずーっと、わたしの頭の記憶の引き出しの中には、一応、この言葉は入っていました。
入っては、いました。
が、理解しては、いませんでした。
公演を見る前。どういう意味なのかな…?と、思っていただけでした。

やっと、分かりました…。
ヒーローものだけど、描いているのは、「人間」です。

打っているうちに、自然と、↑この言葉を思い出していたんです。そうして、ああ、本当だ。本当に、そのとおりだ、と思いました。

途中から、レッドは「ヒーロー」でも何でもない、ただの「人間」になるんです。
今まで、あえて、彼は「ヒーロー」だ、と表記していましたが。
というか…
レッドが考えた「自分が必要とされて居ない」ということ、レッドが起こした「自分の存在意義を見つける為」の行動、
それら全てが、
自分自身。わたし自身の考えや、行動と、シンクロする。共感してしまう。

「自分は、ひょっとして社会で必要とされて居ないんじゃないんだろうか?」
わたしも、多分、そうやって考えたこと、ある。

「自分の存在意義を見出す為、ヒーローショーをやることを決意したレッド。そうして、自分がやっていることが、本当に正しいのか不安になるレッド」
誰だって、そうじゃないか。
レッドという、「ヒーロー」だけじゃないよ、自分の存在意義を見失っているのは。
みんな、そうじゃないか。
みんな、この世の中で、何かしらの爪あとを残したいともがいて、悩んで、本当にこの方法で爪あとが残せるんだろうか、と迷って、不安になって…
明確な「生きていく意味」があった、ただ怪人を倒せば、それでよかった頃。
今はもう、そんな時代じゃない。そうなったときに、「生きていく意味」を見出そうと必死にもがくのは、ヒーローだけじゃない。
むしろ、ヒーローなんて肩書きがついているだけで、彼は、レッドは、人間だ。

人間である彼が、自分の存在意義を確かめようと、もがいて、悩んで、苦しんで…

考え抜いたその先で、彼は「結果」を貰う。
小さな、とても小さなことではあるけれど。
「君は、ここに居ていいんだよ」、と、そう言ってくれた少年が、そうじゃないか。

それが、彼が貰った、答えだったんだ。

「ヒーローものだけど、描いているのは、人間。」

そういうことか…。
この話…。
本当に、「ヒーロー」の話だという体にはなっているけれど、本当は…。
本当は、実際のところは…
わたしを含め、今、この時代を生きている人たちを描いた、
必死に生きようともがいている、「人間」を描いた話だったんだ…。


…。
…、多分、これが、結論だ…。
最初は、「このお芝居、一体何が言いたいんだろう?」と思った、この話。
考え、考え続けること、約1週間(笑)。
やっと、「ヒロイックシンドローム」というお芝居の「結論」ではなくて…
(主人公のレッドが掴んだ、彼なりの「結論」ではなくて…。)
わたしなりの、このお芝居の「結論」が…。
やっと…出た…(笑)。


確かに、そうなんです。
「分かりやすいお芝居」と呼ばれるお芝居では、ここまで考えないです。
だって、「分かりやすい」んですから。

わたしは、このお芝居「ヒロイックシンドローム」に、納得がいかなければいかないほど、考えました。
とっかかりも分からないし、どこから考えれば結論まで辿り着けるのかも分からないし、そもそも扱っているテーマ的にも、本当に結論があるのかどうかも分からない。まずは自分が気になった、どうでもいいことから考えをめぐらせ、気がついたら何日も何日も、ブログの内容が「ヒロイックシンドローム」になっていました…(笑)。

わたしが、このお芝居、結局何が言いたかったんだろう…、と言い続け、散々「いまひとつ…なんかこう…モヤモヤ」としている割りには、「このお芝居、好きだ。」と言い続けることが出来たのって、どうしてだったんだろう。
結局は、「(確かにお芝居の中で、「結論」は出てはいるものの、)何が言いたかったのか分かりづらいお芝居」が、
好きなのかもなぁ。わたし…。

途中で、マジで投げ出したくなりました、
わたし何でここまで、自分でさえも意味が分かっていない「ヒロイックシンドローム」の肩を持っているんだろう(笑)、みたいな(笑)。
でも、そんなわたしの様子を見ていたお友達が(笑)、「分かりやすい結論が提示されていないお芝居だからこそ、あいきさんは色々なことを考えることが出来たのだから、それはそれで良かったのでは?」というメッセージを頂きまして…(マジでありがとうございます…)

そっからまたもや火がついたと思ったら、
もう、わたしは、正々堂々と、胸を張って、声高に言うことが出来るようになりました。

わたし、「ヒロイックシンドローム」、大好きだ。
このお芝居、相当好きだ、わたし。
かなり好きだ、この話。

見に行ってよかった。
今、口から出掛かってはいるけれど、ためらっている一言があります(笑)。

見終わった直後には、どうしても言えなかった、「ありがとう」。
もう少しだけ、あと少しだけ、考えをまとめることが出来たら、言えるかもしれない(笑)。このお芝居に対して、感謝の気持ちが。

「分かりやすいお芝居」「分かりづらいお芝居」自体のことについても、もうちょっと考えたいんだな(笑)。
とにかく…
「ヒロイックシンドローム」、いい話でした。
うん、大好き。

まだしばらくは、ずーっとヒロイックなブログが続いても(笑)。
ま、そのときは、そのとき。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
[12/20 あいき]
[12/20 あゆか]
[08/28 あいき]
[08/28 あゆか]
[08/28 あいき]
最新TB
プロフィール
HN:
あいき
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
Powered by ニンジャブログ  Designed by 穂高
Copyright © レポート/感想/etc… All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]