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2008年6月11日(水)~2008年6月15日(日)
神保町花月『アグレッシブ6』
     
脚本・ゴージャス村上
演出・堀江 B面(劇団THEフォービーズ)
出演・井上マー、カリカ、あべこうじ、オコチャ、オバアチャン
 
ストーリー・生放送がとんでしまったアグレッシブTVに急遽集められた6人!このメンバーで生放送を成功させることができるのか!?6人のダメな人達がお送りするアグレッシブストーリー!!


初日・2日目を観賞して参りました。


+ + + + + + + + + +

オープニングも、セットも、チラシも、かわいい感じで良かったです。

客入れ音楽はミスチルとか。ミスチルとか。ミスチルとか(笑)。
劇中にも、ミスチルの曲がインストで流れていたり、ミスチル好きだな!(笑)
最近はマーさんのミスチルの物真似を見過ぎているので、とっさに浮かぶのがそれで困ります(笑)。

【役柄】
大江戸花火…井上マー
黄緑のジャケットに、胸元には赤い蝶ネクタイ。
10年、芸人をやっているが、カメラの前には立ったことがない、前説しかやったことがない「万年前説芸人」。
台風の影響で「生放送」が飛んでしまうことより、テレビ局まで「嫁の自転車」で来たため、その自転車が飛んでしまうほうが気がかり。
籍は入れているが、「一人前の芸人になるまで、結婚式は挙げない」という約束を花火がした為、結婚して2年、まだ結婚式は挙げていない。

中村…あべこうじ
白サテンのシャツに、赤のジャケット。薄オレンジのサングラスに、左手首には金色の腕時計。赤色の携帯の待ち受け画面は薔薇の花。(多分。ただの赤い花だったかも。)
国営放送「アグレッシブTV」のディレクター。
「おもしろいこと優先主義」で、「とにかくおもしろければそれでいい」という考え方の持ち主。
その為、お昼の生放送の「ワンちゃんの一日」という番組で、延々「犬の肛門」を撮り続けた映像を流し、クビ寸前。人呼んで「肛門ディレクター」。非難されても、本人は「なんでー?おもしろかったのに」
「おもしろいことが出来ればいい」と思って入ったテレビ局だったが、自分の「おもしろいこと」がやりたい、という願望が叶わず、今の頭のかたい職場には不満たらたら。
花火とは旧知の仲。カメラの前に立ったことの無い花火に、生放送の司会代打を任せる。
ちなみにバツイチ。結婚生活については、「最初は良かったんだけど、後半グダグダ♪」

高橋…林(カリカ)
黒のスーツにメガネ…っていうか、普段の林さん(笑)。タバコの箱が、初日は水色だったのでマイルドセブンのスーパーライト?と思ったのですが、2日目に見たら綺麗な緑色で、ハイライト?と思いました。照明の加減で違って見えたのかしら。
アグレッシブTVの「ニュース6」のキャスターを、10年勤める。…が、本日付けで、クビになる。理由は、「視聴率」がよろしくない為。
何よりも「数字至上主義」の為、「おもしろさ優先主義」の中村ディレクターとは犬猿の仲で、中村に対し、「お前とは絶対に一緒に仕事がしたくない!」と、トゲトゲした関係。
「真面目」なイメージを崩されたくない…が、本音は女の人を見るときは、「胸」でもなく「お尻」でもなく、「ウエスト」です。
大切なものは、「森泉」。

ブッチ…家城(カリカ)
袖なしの青・白チェックのシャツに、白のタンクトップ、貝殻の二連ネックレスに両手首に青いリストバンド。破れたジーンズにボロボロのギター。
毎日アグレッシブTVのオーディションを受けるのが日課のミュージシャン。本日、1000回目の落選。
ラブソング専門、音痴。顔は父親譲り。(突然変異という説もある。)
大切なものは、「歌」。

トミさん…オコチャ
作業着。黒のメガネに、グレーの髪。59歳。
アグレッシブTVの清掃員。黒い携帯を常に持ち歩いていて、待ち受け画面は息子の写真。
息子とは生き別れている。
(初日公演では、なぜ生き別れになったのか、その理由は明かされないままだったのですが、それについてエンドトークで、あべちゃんが「知りたいと思わない?」と言及した為か否か、2日目に「酒に溺れて愛想をつかされた」というエピソードが追加。)
酒に溺れたが為に、妻に愛想をつかされてしまったのだが、まだ奥さんのことは大好きで、反省している。今更息子に会わせる顔もないのだが、それでも息子の傍に居てやりたくて、アグレッシブTVの清掃員となり、いつもオーディションに落ちる自分の息子を慰めている。
そう、トミさんの息子は、ブッチ。
ブッチがいつもこのTV局に出入りしていることを知って、トミさんは清掃員になったのだ。
ブッチは、トミさんが自分の実の父親であることを知らない。
けれど、いつもいつも、励ましてくれるトミさんに感謝の気持ちを持っている。
トミさんの大切なものは、「息子」。

テロリストA…赤枝(オバアチャン)
黒のジャケットに黒のタンクトップ、黒いピストル。

テロリストB…畔柳(オバアチャン)
グレーのTシャツ+白のシャツ、ジーンズ。銀のピストル。


【お話】
関東地方に、強い勢力を持った台風がやってきた。
これは凄いね、と、その様子を見ていた中村は、あることを思いつく。
今日のアグレッシブTVの生放送、「大人討論」の出演者を、全員「台風で来られない」という体にして、自分が温めていた企画を流してしまおう、と。
さっそく「大人討論」の出演者を、「全員バラせ!」とスタッフに指示を送る。
(ところで、「バラせ!」って業界用語の意味が分からなくて調べたのですが、「撤収、解散、キャンセル」などの意味だそうです。)
ともかく、これで「大人討論」の出演者は、「台風のせいで」来られなくなった。
もし、中村の用意した企画が失敗した場合は、「クビ」だとお偉いさんに言われながらも、中村には自信があった。
この番組は、必ずおもしろいものになる。そんな、底知れぬ自信が。

今日も今日とて、テレビ局で前説をやっていた花火をつかまえる中村。
花火に「台風のせいで、出演者が全員来られない」ことを伝え、急遽代わりに流す生放送「大人討論・特別編」に、出てくれるよう頼む中村。
テレビに一度も出たことの無い花火は、緊張するし、「絶対噛むし…」と、一切迷わず、即座に出演を拒否する。そんなうじうじした花火に怒鳴る中村。
「お前、何年売れずに前説ばっかやってんだよ。これをチャンスだと思えないんなら、芸人辞めちまえよバーカ!」
「お前となら何かおもしろいことが出来るんじゃないかって、そう考えてた自分が情けねえよ!」

勿論、そこまで怒鳴られて、黙っているわけにはいかない。
花火は「生放送」の出演を承諾する。

「お前なら、そう言ってくれると思ってたよ」

そして中村は、花火に「高橋キャスターを呼んで来て欲しい」と頼む。中村の「番組」には、高橋キャスターが絶対に必要なのだ。
「あいつ、今日番組クビになって、落ち込んでその辺ウロウロしているだろうから」
もし、生放送の出演許可がおりないようなら、高橋にこれを渡してくれ、と、花火に手紙を託す中村。
花火は高橋を見つける為、テレビ局を走る。

そんな高橋は、中村の予想どおり、落ち込んで椅子に座ってうなだれていた。
そこに、オーディションに落ちたブッチもまたやってきて、一緒になってうなだれる。
落ち込んだ様子の2人は、どちらともなく話を始める…が、次第に口論になってしまう。
高橋がニュース番組を降板されてしまったことを話した際、ブッチが、「それじゃあ僕と一緒ですね」と言ったことが火種。
「僕も一緒です、10年間、ずーっと音楽やっているんですけど、オーディションに引っかからなくて」
しかし、そんなアマチュアの売れないミュージシャンと一緒にされたことに、怒り心頭の高橋。
「この、もじゃもじゃオバケ!!」
「なんだよメガネザル!!」

そこにブッチの携帯に、着信。口論は終わり、高橋はすっかり腹を立てたまま、どこかへ行ってしまう。
ブッチに電話をかけたのは、中村だった。
「今日もどうせ居るんだろ?オーディション受けに」
今日もオーディションに落ちたことを伝えるブッチ。「やっぱりね」、と中村。
そこで中村は、ブッチに「生放送」に出演しないか、と伝える。
ブッチは喜んで、何ひとつためらうことなく承諾する。

一方、高橋キャスターを探す花火。
無事に見つけたものの、ブッチの所為で、高橋の機嫌は悪い。更に「あいつが作る番組なんかに、関わりたくない」と、高橋は生放送の出演を承諾しない。
中村ディレクターと高橋キャスターの仲が、こんなに悪いことを知らなかった花火は、すっかり及び腰になってしまうが、とりあえず中村から渡すよう指示された手紙を高橋に押し付け、その場を去る。

さて、中村からの「生放送」出演依頼の通話を終え、感激しているブッチは、掃除をしているトミさんの姿を見つける。
ブッチの姿を見つけ、にこやかに近づいてきたトミさんは、おもむろに「チャンスは必ず来るから、諦めるんじゃないよ」、と、いつものようにブッチを慰める。
しかし、今日は違うのだ。
オーディションにこそ落ちたものの、ブッチは「生放送」に出演できる。
トミさんが励ましてきてくれたおかげで、ブッチはチャンスを掴んだのだ。ブッチには父親が居ないので、時々、トミさんのことが父親に見えることもあった…、いつも励ましてくれて、ありがとう…、そう言うと、トミさんは号泣してしまう。
「励ますことが、正しいことなのかどうかも分からなかったし…!!」
「深く考えすぎだよ!!」

ブッチが去り、ひとりきりになったトミさんは、そっと携帯の待ち受けの、息子の写真を見る。
そこへ現る中村ディレクター。
中村は、なんと、しがない清掃員のトミさんにまでも、「生放送」の出演を依頼する。
ブッチとトミさんが親子であることを、中村は知っていたのだ。
「これから始まる生放送で、ブッチは必ず、恥をかく!」
「じゃあ、なんで番組に出すんですか!?」
「おもしろそうだから」

恥をかくブッチを、父親であるトミさんに、傍で見守っていて欲しい。
自分の番組には、そんな「親子愛」も必要なのだ。
勿論、ブッチには、トミさんが「父親」であることは、内緒にする。
生放送への出演を承諾するトミさん。

さて、花火、ブッチ、トミさんと、生放送の出演者たちが集まった。
しかし高橋キャスターは来ない。
あれほど中村を嫌っていた高橋キャスター。来ないのも当然。
しかし、中村は余裕だった。
「紙、渡したんだろ?だったら大丈夫」
かくして、高橋は紙を手にスタジオにやって来た。
「ホントに紙切れひとつで来た!?」

高橋が持っていた紙に書いてあったこと、それは
「森泉に会わせてやる」

高橋は森泉の大ファンなのだ。
しかし勿論、「会わせてやる」とは嘘八百。森泉は来ない。
怒って帰ろうとする高橋に、中村は言う。
「俺の勝ちだな」

「“おもしろさ優先主義”の俺と、“視聴率至上主義”のお前。お前のほうが先にクビになった、ってことは、俺のやり方のほうが正しいってことなんじゃないか?」

反論する高橋。
「この前のお前の番組、見たぞ。俺のほうがちょっと時期が早かったってだけで、お前だってクビになるのは時間の問題だろ?」
中村は、あくまでも頭を下げる。
「“おもしろい”番組で、“視聴率”を取らないか?…視聴者を、信じてみないか?」
高橋に、この番組に出演して欲しいと、自分と一緒にこの番組を作って欲しい、と頼む中村。

「もう俺に、失うものなんか無い。一度しか、やらないからな」

高橋の出演も承諾されたところで、もう生放送まで、時間もない。
そこで待ち受けていたものは、「生放送の司会」を務めるのが、10年のキャリアのある高橋キャスターでは無く、一度もテレビに出演したことの無い芸人、花火だ、という中村ディレクターの指示だった。
パニックに陥る花火。
生放送は始まる。
当たり前と言えば当たり前だが、一切司会など出来ず、ガチガチに緊張して、使い物にならない花火。
素人のブッチとトミさんは、テンション、やる気こそ高いものの、2人して「今CM?今流れてるの?どっち?」と、それすら分かっていない。
高橋は仕方なく花火のサポートをし、そしてこんなにも混乱しているスタジオを見ながらも、中村は嬉しそうに、ただただ楽しそうに、檄を飛ばしたり、指示を出したりする。

もともと「大人討論」は、政治・経済・社会問題のことなどについて、業界人が話し合う、おかたい番組。
そして高橋が、「それで、今日の討論のテーマは、一体なんなんですか?」と聞くと。
中村から台本を渡されていた花火は、言いづらそうに、申し訳なさそうに、ビクビクしながら「討論のテーマ」を発表する。
「今日のテーマは…“お尻”です」

理解出来ない高橋、ノリノリで自分なりの「お尻」について討論を開始してしまうブッチとトミさん。
乗り気ではない高橋に、「それじゃ討論になってねーぞ!」と、ブッチがけしかけ、最終的に高橋は、「お前らは何も分かってない!女性を見るときは、まずウエストだろ!!」

CMが入り、もうやりたくない、と帰ろうとする高橋に、「それじゃ“ウエスト”って言ったから帰ったみたいになっちゃうよ?」と中村。
次のコーナーは、「お尻であいうえお作文」。更に次のコーナーは、「尻文字ゲーム」。
ミスを連発する花火。そして内容にうんざりする高橋は、CM中、「わたしが本音を言ったら、こいつらへの悪口しか出てこない」けれど、やりたい放題のこの番組で、自分の「本音」をぶちまけることを豪語する。
波乱のまま本番になり、次のコーナーは「尻文字ゲーム」
テーマは「大切なもの」。
ブッチがお尻で文字を書き、それを他の出演者が当てることになる。ちなみにブッチの正解は「うた」。
そして、高橋はブッチに向かって、「本音」を出す。
「歌が下手過ぎる」「テレビに出ることがどれほど大変なことか!」「才能が無いお前みたいな奴は、何度やっても駄目なんだよ!」

ブッチも高橋を迎え撃つ。
「知らねえよ!歌いたいから歌うんだよ!伝えたいから伝えるんだ!俺は決めてたよ、10年やってんだ、どっかでケジメつけねぇと!だから、1000回目、落ちたら、もう音楽はやめよう、って」
高橋は怒鳴った。
「人の話を最後まで聞け!!」

「わたしは…、わたしは、そんな君のことを、かっこいいと思う!!」

思わぬ高橋の本音に、驚いて崩れ落ちるブッチ。
「この流れは…読めない…」

「わたしがキャスターになったばかりのときは、“伝えたいから伝える”という気持ちでやっていた。…だけど、最近では世間体や視聴者へのイメージ、視聴率ばかり気にして…。いつの間にか、“伝えたいから伝える”という気持ちを、忘れていました。
だからこそ、“歌いたいから歌う”というブッチ君のその生き様が、羨ましくて、疎ましかったのかもしれない…」

ブッチはうなだれる。
「なんか…敵意を向けてすみませんでした。でも、次からは…もっと感情を分かりやすくしてください」

「さあ、わたしは“本音”で話したぞ!」

ブッチのことを、オーディションに落ちても落ちても励まし続けていたトミさんは、「ずっとやり続けていて、良かった」と、「ずっとがんばってきたから、ブッチ君にはチャンスが来たから」と…、花火に向かって言う。
「花火さんも、ずっとがんばっていたら、必ずチャンスは来ますよ」、と。

高橋は吹っ切れた。
みんなが「本音」で討論した。
あとは、ずっとビクビクしてばかり居る、花火が吹っ切れる番なのだ。

「みなさん…、今まで、すみませんでした…。高橋さん、ずっと仕切って頂いて、すみませんでした!これからは、この大江戸花火が仕切らせて頂きます!!」

遂に吹っ切れた花火。
お次はトミさんが、「尻文字」で「大切なもの」を書く番。ちなみに答えは「むすこ」。
トミさんの答えを当てようと、白熱するブッチと高橋。そのときだった。

黒ずくめで、目だし帽をかぶり、手には黒いピストルを持った男が、スタジオに入ってきた。
その男は出演者ひとりひとりを殴りつけ、ピストルを突きつける。
テロリスト。
彼の要求は、「捕われた自分の軍のボスの解放」。そして警察がこの要求を呑まない場合、5分が経過するごとにひとりずつ、生放送の出演者を、見せしめとして殺していく。

恐怖と混乱に、凍りつく一同。
…だが、中村は指示を出した。この番組のディレクターとして、出演者にカンペを出す。「番組を、続けろ」と。「テレビの前には、この番組を見てくれている人がいる!その人たちを、楽しませろ!!」と。

テロリストが後ろを向いている隙に、高橋は尻文字で「大切なもの」を書く。答えは「森泉」。
だが、「不審な動き」をしていることがバレてしまい、テロリストは怒って高橋にピストルを突きつける。
ブッチが高橋に話しかける。
「高橋さん!アンタそれ、漢字で書いた?」
高橋が出したヒント、正解の「文字数」は「5文字」。
「漢字です…」
「漢字で書いたら、2文字じゃん…」

「ごちゃごちゃ言うな」、と、高橋に怒るテロリスト。
「違う!わたしはディレクターの指示に従っただけで…!」
「ディレクター?そいつはどこに居る?」
「ここに…」
高橋が指した場所に、中村の姿は無かった。
なんと、中村は逃げていた。

冷たいアラーム音が鳴る。
5分が経過した合図だった。
テロリストのもとに、連絡は無い。

高橋に突きつけられるピストル。
そのとき、ブッチが叫んだ。
「やめろ!!俺を殺せ!!」

「さっき、高橋さんに助けてもらったから」
「もう俺、才能無いんだ、って…。オーディション1000回落ちて、もう音楽やめようって思ってて…。でも、そういう風に見てくれている人も、居るんだ、って思って…凄く助けられたからさ…」

テロリストにとっては、「見せしめ」となれば死ぬ相手は誰でもいい。
ブッチに向けられる銃口。
だが、そのときトミさんが、ブッチの前に立ちはだかり、両手を広げた。
何をしているんだ、とブッチは怒るが…
「今更、偉そうなことは何も言えない…。だけど、命は大切にしなさい。…最後ぐらい、父親らしいことを、言わせてくれ…」
体はテロリストに向けたまま、そっと自分のポケットから携帯を取り出し、ブッチに押し付けるトミさん。
携帯を開き、その待ち受け画面を見たブッチは驚く。
「俺の…小さい頃の写真…」

だが、やっと会えた父親は、今、目の前で殺されようとしている。
ただただ父親の後ろで脅えたまま、ブッチは悲しみと悔しさに震える。そして。

両手を広げたトミさんの前に、花火が立ちはだかった。
テロリストに真っ向から向き合い、トミさんをかばう花火。
「お前は…お前の勝手なワガママで、人の命を奪うのか!?やっと会えたんだぞ!?この人たちは、みんな不器用だ。でも、一生懸命に生きている!!お前なんかに、この人たちは、絶対に殺させない!!この中で、一番殺されていいのは…俺だ…。俺を、殺せ」

それぞれが、大切な人をかばい合い…そして、花火をかばうことの出来る人は、このスタジオ内には居なかった。
花火のこめかみに、銃口が突きつけられる。そのとき、花火は言った。
この番組を、もしかしたら今、見ているかもしれない、嫁に。
最後に、メッセージを伝えたい。
花火はテロリストに、1分だけ、時間を貰った。
そして、カメラに向かって、言った。銃口を突きつけられながら、最後のメッセージを。
「結婚して…2年になるかな…。
 今まで、しょうもない俺を支えてくれて、ありがとう。
 結婚式を挙げる約束、守れなくて、ごめん。
 一人前になるまで、なんて言ってたけど、ほんとは逃げていただけでした。
 結婚式、挙げておけばよかった、って、今となっては思います。
 俺は、居なくなります。
 幸せに、なってください」

テロリストは花火を嘲笑った、
「“結婚式を挙げる”なんて、どうせお前、今から死んじまうから言っただけなんだろ!?」
「違う!挙げるよ!死ななくたって、結婚式ぐらい挙げてやるよ!!」

グッと、花火のこめかみに食い込む銃口。
歯を食いしばり、だらだら汗を流し、花火は固く目を閉じた。
テロリストが、ピストルの引き金に手をかける。

冷たい電子音が鳴った。

テロリストの携帯の着信。
電話に出たテロリストは、「ボスが解放された」ことを知る。

テロリストの目的は、達成された。
ならば、もう「見せしめ」は必要ない。さっさとこの場を逃げるのみ。
「うまく、逃げられっかなぁ…」
テロリストは、花火に向かって、言った。
「お前みたいにな」

スタジオを去るテロリスト。
緊張が解け、くず折れる花火。
誰もが呆然としていると…

「お疲れ様!」

スタジオに、中村ディレクターが現れた。
「はい、カット!」
中村は皆に拍手を送り、呆けた顔の出演者たちを見て、ああ、そうか、と看板を持ち出す。
看板に書かれた文字は、「ドッキリ大成功」。

テロリストは、中村が呼んでおいた「仕込み」。
全ては、中村の「ドッキリ」だった。
「花火!お前、結婚式挙げろよ?言ったよな、結婚式、挙げるって!」
今までのテロリストが、「偽者」だったこと。
全てが分かって、スタジオには穏やかな空気が流れた。

「…数字、良いといいな」
高橋キャスターは、中村に向かって言った。

そのとき、スタジオ内に、覆面をかぶり、グレーのTシャツにジーンズ、銀のピストルを持った男が飛び込んできた。
「テロリストだ!手を挙げろ!」
その男を見て、中村は「あれ?」と男を呼び寄せる。
「今、来た?」
「無茶ですよ中村さん!台風の中、今すぐ来いだなんて!」

中村が仕込んでいた「テロリスト」は、台風の中、たった今、スタジオに到着した。

と、いうことは。
先程の「テロリスト」は。


「アグレッシブ6」おしまい。

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